診断治療法開発 創薬部門

診断治療法開発 創薬部門の研究内容

武永美津子(准教授)

脂肪組織由来体性幹細胞を用いた細胞治療の試み

再生医療における細胞治療源としては、胚性幹細胞(ES細胞)、体性幹細胞、iPS細胞があげられますが、倫理性、安全性、免疫拒絶の問題等から最も実用化に近いのは自己由来の体性幹細胞です。我々は多くの利点をもつ脂肪組織を再生ドナー源として着目して研究してきました。外傷性脊髄損傷疾患、あるいは肺気腫疾患に脂肪組織由来幹細胞(Adipose-derived stem/stromal cells; ASCs)の移植治療効果があることを動物モデルで明らかにしています。とくに薬効メカニズムに焦点をあて研究中です。

新規ナノカプセル化製剤、レシチン修飾タンパクなどのDDS※製剤の薬理学的研究

※DDS=Drug Delivery System

難病治療研究センター設立のきっかけとなったリポPGE1を基盤とした各種リポ製剤の薬理評価と機序の解明に力を注いできました。新たに生分解性ポリマーからなるナノカプセルにPGE1を含有させた製剤が、外傷性脊髄損傷治療に有効であること、傷害部位への集積性および徐放性が顕著な製剤であることを病態モデルで見出しました。現在、脊柱管狭窄症疾患への有効性を検証しています。

また細胞膜親和性および滞留性を獲得したレシチン化SOD (superoxide dismutase)の有効性を種々の病態モデルで明らかにしており、さらに学術的基盤研究を展開中です。

山口葉子(准教授)

私の研究室では、標的薬剤を病変幹部に効率よく届けるための技術であるDrug Delivery System (DDS)の研究を行っています。特に皮膚から薬剤を浸透させるための経皮吸収技術が中心です。注射と同等レベルでの薬剤吸収をさせる新規技術を構築し、将来は世界中の感染症で苦しむ子ども達を救うための『塗るワクチン』の創生を目指しています。最近の皮膚に関する研究では・…、

  • アトピー性皮膚炎治療の非免疫系からのアプローチ-皮膚疾患としての捉方-
  • 生理的皮膚老化と光皮膚老化に関する基礎研究
  • 難溶性薬剤の新規ナノカプセル化技術の創出
  • 新規経皮吸収技術の構築 -『塗るワクチン』の構築を目指して-
  • 毛母細胞及び毛乳頭活性化のための新規薬剤のスクリーニング-育毛剤開発-
  • 毛孔性苔癬・掌せき膿疱症の根治治療メカニズムの解明

皮膚以外の研究としては、ナノカプセルを利用した難治性疾患の治療として…

  • 外傷性脊髄損傷治療薬(急性及び亜急性期)の開発

新薬の創生として、特に難治性疾患やオーファン疾患を対象とした薬剤のスクリーニングを行っています。主な研究として…

  • 新規合成レチノイドによる抗癌効果の検討

上記研究成果を元に、2006年より聖マリアンナ医大認定ベンチャーである株式会社ナノエッグを設立し、多くの企業と共同研究を推進させながら研究成果の実用化を目指しています。

鈴木越(講師)

1) 冠動脈ステント挿入部の再内皮化を促進する治療法の新規開発

冠動脈狭窄の治療にdrug-eluting stent (DES)が広く使用されている。DESは新生内膜の増殖を抑制し再狭窄を予防するのには適しているが、一方で溶出する薬剤によりステント部の再内皮化が抑制されて血栓の形成を促進する、あるいは冠動脈の攣縮を誘発する欠点も併せ持っている。我々は血管内皮細胞の増殖・遊走を促進する因子を用いて再内皮化を促進する治療法の開発を行っている。血管内皮細胞は血管平滑筋細胞の増殖を抑制する因子を産生し、またマクロファージの浸潤を抑制するので再内皮化促進により同時に新生内膜の形成を抑制する事を期待できる。

2) 勃起機能障害に対する細胞治療・遺伝子治療を用いた再生医療の試み

高齢化社会を迎え、勃起機能障害は患者の生活の質を低下させるため、有効な治療法の開発が望まれる。現在使用されているphosphodiesterase type 5阻害薬は海綿体の構造が著しく障害される高齢者あるいは糖尿病患者の場合には効果が期待できない。我々はいくつかの体性幹細胞投与が勃起機能を改善することを見いだしているが、これらの幹細胞が分泌するサイトカインの中から海綿体の構造を改善し、海綿体血管内皮機能を改善する因子を探索している。既に我々は海綿体の構造を改善するサイトカインを1つ同定しているが、現在その他の候補についても機能解析を行っている。 

藤井亮爾(講師)

炎症研究は免疫を主とした研究が盛んに行なわれていますが、私たちは患部組織細胞の応答メカニズムに焦点をあて研究を行なっています。具体的には関節リウマチや変形性関節症でみられる滑膜炎のメカニズムについて滑膜細胞を用いて調べています。

関節腔を包む滑膜組織を形成する滑膜細胞の異常増殖は、リウマチ病態の主座の1つであるにもかかわらず、そのメカニズムには不明な点が多くあります。私たちは滑膜増殖メカニズムを探る端緒となる分子を得るため、リウマチ疾患モデルであるコラーゲン誘導関節炎(CIA)マウスを用いた網羅的遺伝子発現解析により新規滑膜細胞増殖関連因子を見出しSPACIA1と名づけました。SPACIA1は、滑膜炎を起こした人の滑膜重層化部分でも発現が認められ、その発現抑制は培養滑膜細胞の増殖を抑制しました。またSPACIA1過剰発現マウスにCIAを適用したところ野生型マウスにくらべ関節炎が早期に発症し重症化したことから、SPACIA1は滑膜細胞の異常増殖や滑膜炎に深く関与すると考えています。

近年、リウマチでは非常に効果の高い生物学的製剤が臨床利用されていますが、多因子性疾患であるが故にこれらの薬でも効果が認められないケースも多く、新しい作用点を持つリウマチ薬が求められています。SPACIA1を中心とした滑膜炎の一面を分子レベルで理解することで、さらなる創薬標的が見出されることを期待しています。

唐澤里江(講師) 先端臨床プロテオミクス研究室

私たちは、From Clinic to Bench:臨床の現場で求められていることに着眼した研究、From Bench to Clinic:その基礎的な研究成果を臨床に還元することを目標に研究しています。高分子蛋白質の検出が可能であるアガロース2次元電気泳動を用いたプロテオミクスによって疾患標識マーカーの検出をおこない、病因・病態解明、診断補助キットの開発や新規治療薬および治療法の開発を目指しています。海外との共同研究を通じて本研究室より大規模スタデイーを発信していきたいと考えています。国際学会 (2004年~)ではアメリカリウマチ学会 (oral presentation:4回、poster presentation:4回、2008年にはVasculitis Highlightsに取り上げられた)、ヨーロッパリウマチ学会および国際免疫学会(oral およびposter presentation)等で研究成果発表をおこなっています。

現在進行中の主なテーマ
  1. 「アメリカ血管炎グループ (VCRC) との共同研究による全身性血管炎における疾患特異的マーカーの検出:抗血管内皮細胞抗体の対応抗原からのアプローチ」Boston University School of Medicine, Cleveland Clinic Foundation,The Johns Hopkins Vasculitis Center, Mayo Clinic College of Medicineを中心としたVCRCとの共同研究で、人種別評価含め国際的な活動をおこなっています。また研究のみではなく臨床面においても意見交流をおこなっています。
  2. 「プロテオミクスを用いた小児血管炎における疾患特異的マーカーの検出」東京医科歯科大学小児科、高知大学医学部小児思春期医学、金沢医療センター
    小児科、北里大学理学部附属疾患プロテオミクスセンター、今年からフランス血管炎グループ (FVSG) との共同研究も始まり、現在川崎病を中心に研究をおこなっています。